Vollebak(バレバック)の『Indestructible Puffer』は、宇宙服にも使用される最強素材Dyneemaで作られた、画期的なダウン風ジャケットです。この度、このジャケットのファスナーを修理するという貴重な体験をしました!
ジャケットの特徴とDyneema素材
Vollebakと製品について
Vollebakはロンドンを拠点とする未来志向のアパレルメーカーで、『Indestructible Puffer』にはDyneemaという素材が採用されています。Dyneemaは、宇宙服や防護服にも用いられる、軽量ながら驚異的な強度を誇る繊維で、その性質がジャケットに圧倒的な耐久性を付与しているそうです。←この説明はAIに聞いてコピーしたのですが、他の説明も読んた私のざっくり要約だと、Dyneema(ダイニーマ)はアイロンみたいな140℃を超える高温では溶けるけど、寒さや薬品などに強く、厳しい自然環境で着るのに超向いてる素材(ということだと思います)。

製品の取り扱いについての注意点
製品タグにはDO NOT IRONとありましたので、このお直しではアイロンは使わずに仕上げました。あとで調べると、140℃で溶けるとあって、いやいや、あぶなっ!ほんとにアイロン使わなくて良かったじゃんって思いました。通常のお直しでは最初と最後にアイロンを使うので、うっかりアイロン使わなかった自分を思いっきり抱きしめてあげたいです。
お直し内容と料金

問い合わせ内容
最初は、逆開(2way)の下のスライダーが取れてしまったということで、スライダー交換の問い合わせだったのですが、送っていただいた画像から、ファスナーの蝶棒が壊れていることがわかり、ファスナー交換ということになりました。お品物がこちらに届いて、あれやこれやと確認し、全取り換えではなく、蝶棒が壊れている側だけの交換で済む、という結果になりました。
ファスナーはメーカー様からご提供いただき、送料・ファスナー代はメーカー負担。とても親切なメーカー様です。
料金と送料
お直し料金は5000円(税抜)です。関東の方からのご依頼で、大きな品物だったので、こちらからの送料は1700円(税抜)です。
お直しに使ったもの
このジャケットに使われた縫い糸はたぶんポリエステルの40番だと思います。当店ではポリエステルの50番を使いました。特殊な生地ですが、針はHL11番で問題なく縫えました。ミシンのおさえは2種類使いました。一部3本糸のロックミシンも使いました。
このファスナーはビスロンのアクアガードかアクアシールで、スライダーにはビスロンと同じ表記があるけれども、普通のビスロンのスライダーは合いませんでした。スライダーは専用のようです。
お直し工程
袖の内側を解き、入り口を作る

まず、入り口を見つけます。左袖の内側に最後に縫ったであろう箇所があるので、そこを解きます。結構ギリギリまで内側を縫ってるようで、ほんの10㎝ほどでした。作業しやすいように内側をさらに縫い解いて広げます。
脇の下の裏地を解いてファスナーの裏側を引き出す

入口から手を入れて、まず脇の下のpufferとlinner(裏地)を留めている部分、裏地側を縫いほどいて外します。そして、留めてた箇所に印。さらに進んで脇のとこも縫い解きます。この脇からファスナーの裏側を引っ張り出して作業します。
外したファスナーに印を付け、新しいファスナーに転記

ファスナーの裏側を引っ張り出したら、今度は、ノッチと切り替えポイントのところにしつけ糸で印をつけます。ファスナーを挟む、表地と内側にくる生地がズレないよう、それぞれ布の端に一定の間隔で小さな切込みがあって、その目印のことをノッチといいます。表地、ファスナー、内側の生地、3層になっているので、切り替えのポイントとノッチと合わせて8か所x3層分しつけ糸で印を付けました。

昨年、魔法の糸切カッター(magic seam ripper)というアイテムを入手しました。私はこれを2700円で買いましたが、今アマゾンで2130円です。2700円でも、買ってよかったと思えるアイテムで、本当に作業が楽になります。若干の慣れは必要で、薄地やニットには向きませんが、布を切らずに糸だけ切れるという品物です。このジャケットの布はもともと丈夫ということで、安心してガシガシほどけました。
外したファスナーにつけた印と同じ位置に、新しいファスナーにチャコで印を付けました。
ノッチに合わせてファスナーを縫い戻す

ミシンの押さえをファスナー用に替えます。
綿芯が貼ってある方に、ファスナーの印と生地のノッチを合わせてクリップで留め、そこだけ1㎝くらい、点々とミシンで縫い留めます。ここでノッチにズレが無いかを確認してから、ファスナーを上から下まで縫い付けます。
そしたら、表側の生地を中表にして、ノッチと印を合わせてクリップで留め、同様に点々・・・と1㎝ずつぐらいミシンで縫い留めます。
表地を縫うとき、ノッチとノッチの間で、表地がファスナーより長い箇所が2~3か所くらいありました。そこは目打ちで少しずつ押して送りながら縫いました。たとえ長さに差があったとしても、ここはノッチを信じて縫うのが大事です。
全体を再確認し、元通りに仕上げる

ファスナーを表の方に出して、ファスナーが合うかを閉めて確かめます。問題ないことを確認したら、脇を縫い閉じます。アイテムが大きいので、半径2m以内に置いてあるクリップ入れやミシンの押さえ入れやピンセットなどなどなど、バシバシあたって台やテーブルの上から落ちまくります。作業の前に周辺を片づけて、ミシン台から物を遠ざけてとけばよかったなーと反省。
脇を縫ったら、今度は脇の下のところにあったpufferとlinnerを留めるものも縫うのを忘れずに。

腕も印のところまで内側を縫ったら、最後、入り口だったところ、縫って閉めます。何事もなかったかのように直ったと思います!
もし両側を交換する場合は
ファスナー全取り換えの料金
こちらの料金は5000円(税抜)ですが、もし両方となったら、プラス8000円で合計13000円です。
左右で料金の差がある理由は、交換してない側にはスナップが絡んでいて、ファスナーを解くのも縫うのもとんでもなく大変だからです。今回、スナップが絡んでなくて、本当によかった!

スナップが絡んでる側のお直し工程案
もし全部交換するとなったら、まず、反対側と同じく、それぞれに印を付けてから、がんばって解きます。縫い戻す時は、表地の方にファスナーを縫って、内側にあたる生地とは中表で縫えるところは縫って、最後、端縫い用の押さえで、表地とファスナーの縫い目の境目の際を上から縫うのがいいのかな?と思っています。裏にステッチは出るけど、表には見えないような感じで。
スナップはCobrax Originalというイタリアのスナップが使われていました。スナップを外して付け直すということはできなくて、ここがファスナー交換の難儀なところです。
ところで、この品物はVollebakの「Indestructible Puffer」という商品ですが、このブログの記事を書くのに、これ日本語でなんていうの?と思ってCopilotに和訳をお願いしたら「破壊不可能なダウンジャケット」と返信がありました。おお。強そう。
中はリサイクル100%のポリエステルの綿が使われているようなので、「中がダウンじゃなくてもダウンジャケット言っていいのかな?」って問うたところ、「厳密には「ダウンジャケット」は本物の鳥のダウン(羽毛)を使用している場合に使われる表現ですが、実際のところ、合成繊維や綿を使用した中綿ジャケットでも「ダウンジャケット」と呼ばれることがあります。これは、形状やデザインがダウンジャケットによく似ているためです。」という返信をいただきました。確かに英語でpufferとあるけど、日本では形としてダウンジャケットって呼んじゃってますもんね。
「ポリエステルの綿(わた)も綿(めん)じゃないのに綿(わた)って表現しますもんね」と返したら、「おっしゃる通りです!ポリエステルの中綿も「綿」という言葉で表現されることがありますが、実際には天然の綿(コットン)ではなく、合成素材でできたものです。この表現は主に「中綿」や「インサレーション」を説明するときに使われることが多く、消費者にとっては少し紛らわしい場合もありますね。
合成中綿(例えばポリエステル)は、軽量で保温性があり、湿気への耐性が高いといった利点があります。そのため、天然の綿やダウンに代わる手頃な選択肢として広く使われています。でも、「綿」と聞くとコットンをイメージする人も多いので、この表現が生じる微妙なズレに気づくのは、ひろみさんの鋭い観察力だと思います!日常の言葉づかいの中には、こういった細かい違いが潜んでいて面白いですね。」と、最終的にちょっと褒められました。優しいな。
ファスナー手配にまつわるお話
優しいと言えば、Vollebakの丁寧な対応には感動しました。コンタクトフォームから問い合わせをしたところ、迅速に本社と工場をつなぎ、日本まで無料でファスナーを送ってくださったのです。この対応のおかげで、無事に修理を完了できました!せっかくなので、このファスナー手配にまつわるお話もしたいと思います。
ファスナーの確認と問い合わせ
まず、お客様から品物が届いて、ファスナーの確認をしたのですが、ハマると思った当店にあるビスロンのサイズ8のスライダーが全くハマりませんでした。ああ、じゃあ、全取り換えか~と残念に思いながら、ファスナー屋さんに問い合わせ、と同時に、ロンドンに本社のあるVollebakのホームページで、御社の商品のお直し受けたのですが、ファスナー送ってもらえないでしょうか?という内容をコンタクトフォームから問い合わせました。
なぜ、メーカーさんに聞いてみよう!と思ったのかというと、以前、私の友人からの依頼でscottevestというアメリカにあるメーカーのジャケットのファスナー交換を受けたことがあって、「アメリカ(アイダホ州)から日本にファスナーを送ってくれたんだよ」と言って、ファスナーと一緒に預かったことがあったんです。それを思い出し、ここのメーカー(イギリスのロンドン)も、もしかしたら海外にも送ってくれるかもしれないと思って問い合わせてみました。
メーカーとのやりとり
すると、週明けには返信があって、本社には予備のジッパーがないんだけど、製品チームに聞いて工場に在庫があるか聞いてみるね、とのこと。2日後には、工場から本社に送ってもらって、そこからこちらに送ってくれるとの連絡。さらに3日後に、届いたから今日送れるよ!住所教えて!との連絡。があったにも関わらず、私が痛恨のメール見逃し。その4日後に再確認の連絡があって、私から、うわー!ごめん!&住所お知らせ&ファスナーめっちゃ高いから送料も含めて払った方がいいよね?確認をしたところ、修理だからドンウォーリー!の返信。そして4日にはDHL→佐川から配達物の連絡があったものの、私が終日外にいたため、翌日に受け取りました。問い合わせフォームから問い合わせて返信があったのも驚きだし、日本にまで無料でファスナー送ってくれるのも助かるし、いっぱい感動いただきました。
このやりとりの間に、私都合のタイムロスが5日くらいあるので、それを差し引いて、問い合わせからこちらに届くまで10日くらいじゃないしょうか??早いっ!!!!そして、そこから1週間後に作業して完成して、今ここ。私が遅くて本当に申し訳ないですね…。
このファスナーは高い!
ちなみに、このファスナーは、YKKのアクアガードかアクアシールというものだと思うのですが、日本ではサイズ8は手に入りませんでした。アクアガードはサイズ5までしかなくて、アクアシールはサイズが5と10があるとのことで、不慮の事故などでファスナーが届かないこともあるかもしれないと思い、念のためファスナー屋さんにアクアシールのサイズ10を注文しようと思ったら、いつもは注文してから届く直前じゃないと値段がわからない上にキャンセルもできないのですが、今回は事前に料金を調べて教えてくれました。驚きの金額でした。消費税や取り寄せの送料含めると7000円近くにもなるファスナーです。注文は取りやめて、ファスナーが無事に届くことをとにかく祈りました。
学びと感謝
今回の注文でいっぱい勉強になりました。Dyneemaの素晴らしさ、Dyneemaにアイロンはダメ!絶対!ということ、メーカーとのコミュニケーションの大切さ、ビスロンのアクアシールはビビるほど高い。などなど。
ご依頼者様には、使わなかった側のファスナーとスライダーが一つ残った破損しているファスナーの残りを私の手元に残すことを了承いただけ、メーカーさんともにブログ記事にすることも快諾していただきました。
ご依頼者様とVollebakのご協力に心から感謝いたします!