ジャケットのリメイクをしました。
白いジャケットのフラップポケットやサイド部分のパーツ部分を黒のサテンに変えるものです。
3月中旬あたり、デザイン画が添付されたお問い合わせメールがありました。
「このデザインのジャケットを作ってもらえませんか?」 と。
当店では、1から作るオーダーメイドは承っておりませんので、お断りの返信をしなければなりません。
でも、英語でのお問い合わせだったので、お問い合わせ主はやってくれそうなところを探すのも大変だろうな~と想像し、ただお断りするのは、気が引けました。
そこで、私のほうで、ちょっとやってくれそうなところを探してみて、その結果と一緒に返信しようと思ってました。
すると、返信する前に、ピンポーンとお問い合わせ主が来店。
彼の名はジョナサン。
県立大学駅か堀ノ内駅が最寄駅の当店ですが、いずれも逃し久里浜まで行ってしまい、戻って、やっとたどり着いたとのこと。
うちのお店は、商工会議所さんが発行している、YOKOSUKA ICHIBANの冊子で知ったのだそう。
うちでは残念ながらオーダーメイドは受けてない旨を説明しつつも、せっかくお越しいただいたので、一緒に探しましょう!と、私の知り合いに電話して聞いてみたり、タブレットで検索、やってくれそうかな?ってところを片っ端から私が電話で問い合わせました。
予算(3~4万円)を聞いて、なんとなく、やってくれるところ無さそう・・・。
と、思ったのですが、私の知り合いを含め8か所くらいに問い合わせてみましたが、案の定、ありませんでした。
とはいえ、私も勉強になりました。
メモ:
脇に切り返しがある(2種類以上の生地を組み合わせるような)ジャケットは3面体とかクレイジーパターンと言うらしい。
セミオーダーで作るスーツ屋(SADAや麻布テーラーとか)さんでは無理で、パターンからのフルオーダーになるでしょう、お値段、10万円~30万、との回答。
3~4万円でスーツを販売してるところは、布カットをレーザーで行ったり、生産ラインが決まっているので、一部、別布を代わりにというような変則はNGとのこと。
彼も横須賀で何件か問い合わせたとのことでしたが、彼が問い合わせしてないところもあるだろうと思い、まず、横須賀中央にあるサクマ手芸用品店さんへ電話してみました。
すると、ミウラヤ・コレットさんに相談してみてはどうだろうかとアドバイスを受けました。
すぐ、ミウラヤ・コレットさんへ電話してみたところ、やはり予算内では難しいという話でしたが、「そのデザインを見て相談してもいいよ」という返答をいただきました。
軒並み断られ続けた中で、デザインをみてもいい、という言葉は、唯一の希望に感じました。
私は人の年齢を当てる目は皆無ですが、ジョナサン君は、私よりは若いだろう、というのはわかりました。
終始英語での会話だったので、日本語は不得意なんだろうと思い、若い子が言葉の通じない異国でこんな込み入った注文するのは大変だろうな…と感じ、私のアメリカ留学中・滞在中に、たくさんの親切なアメリカ人に助けられたことを思い出し、とにかく私のできる限りのことはしようと思いました。
そこで、次の日の11時に横須賀中央のタリーズ前でジョナサン君と待ち合わせ。
とりあえず、デザインを見てもらうだけでも、と、三笠のアーケード商店街にあるミウラヤ・コレットさんを二人で訪ねました。
店主の方は背が高くてダンディで優しくて素敵な方でした。
私は通訳係でしたが、会話の中で、このジャケットは、プロムパーティに着て行きたいということが判明。
プ、プ、プロム!
映画か海外ドラマでしか観たことない、あの噂(?)のプロム!?
ということは、ジョナサン君は高校生!
横須賀の基地の中にある高校に通う、シニアイヤー(3年生)で、2か月後(5月)にはアメリカに帰るのだそう。
高校卒業直後、英語が全く話せないくせに怖いもの知らずでアメリカへ留学した18歳の私とジョナサン君を重ねずにはいられませんでした。
「なんとかしてあげたいね。」
と、おっしゃるミウラヤさん。
「こういうのはあるよ」
と、白いジャケットを裏から出してくれました。
ジョナサン君デザインのジャケット、全部白くしたようなデザイン。
サイズ感も悪くない。
「お直し屋さんで、パーツ部分だけ替えてもらうとか・・?」
と、提案があり、
「それなら私できるよ!」
と、さらに提案。
実のところ、ジョナサン君のお父さんも、同じような提案してたそうですが、フルオーダーにこだわり、自分で探す!と思ってたジョナサン君。
片っ端から断られた様を目の当たりにしたこともあって、ジョナサン君も「それで!」と、白いジャケットのパーツ部分をリメイクするということになりました。
ジャケットも割り引いてもらって、私も、お直し代を学割としてかなり割り引いた金額を提示、予算内におさまりました。
まず、ミウラヤさんがこの白いジャケットを持っていたことが奇跡。これがなければ形にはならなかった案件と思います。
ユザワヤでジョナサン君にサテンの生地を1m買ってもらい、生地とジャケットをあずかりました。
このバトンが私に回ってきた時、ジョナサン君の日本での思い出が良いものになるかどうか、このジャケットにかかってるかもしれない!、国と国との!下手したら国際問題に?!…など、壮大な責任を感じ、気合を入れてリメイクしました。
今年に入ってから妙に忙しく注文がたまっていたので、ジョナサン君から注文を受けたのは3月中旬でしたが、4月20日に受け渡しすることに。
ちなみに、学割無しの料金は、3万円(生地別)です。
受け渡しの際のジョナサン君の笑顔、とても嬉しかったです!
半分だけ、工程を写真で記録したので、次の記事でそれを紹介したいと思います。